オリジナルサスペンス2:武田探偵の事件簿:推理同好会殺人事件:#1

「全く・・・、なんなんだよ『推理同好会』って・・・。」
 武田は、揺れるワゴン車の中でそうつぶやいた。
「まあまあ、偶然ネットで知り合った同士ですし、2泊3日の推理好きしかできない話でもしましょうよ!」
 そういったのは、ワゴン車を運転している『杉下希一』、26歳だ。推理同好会とは、とあるネット掲示板にて始まった、いわばオフ会のようなものである。もちろん、武田がそのような掲示板でチャットをするわけがない。犯人は零次だ。ネットサーフィンを良くする零次はその掲示板、『推理同好会掲示板』にて楽しくチャットをしている最中に、オフ会をする話になったのだが、当日になってドタキャンが発生し、急遽武田が行くことになったのである。もちろん、杉下はそのことは既に知っており、知らないのは『先にオフ会の会場』に言っているほか4人の人たちである。
「しかしまあ、『HBさん』の代わりが本物の探偵だとは!既に到着している方たちも、きっと喜びますよ!」
「え、HB?もしかして、『ハードボイルド』・・・のことでしょうか?」
「ええ!HBさんが、そういうハンドルネームで来ているんです。」
 『ハードボイルド』とは、なかなかべたなハンドルネームを使う零次を、ちょっと懸念しつつ、話を続けた。
「えっと、他には誰が・・・?」
「ああ、私は管理人で主催者なので、本名は明かしているんです。ハンドルネームは『相棒』ですよ!」
 なるほど、杉下希一の杉下で、『杉下右京』、それで相棒・・・、なかなか洒落が利いている。そうこうしている内に、会場に着いた。会場・・・というより、一見の館と言った方がよいだろう。杉下が、事件が起こりそうな場所で話したほうが感じが出る、という理由でらしいが、そこまでしなくても、と思う武田であった。
「さ、4人がお待ちかねですよ!!」
「あ、はい・・・。」
 そういって館に入ると、男1人、女性3人、計4人がロビーのソファに腰をかけていた。いや、一人女性は立ってタバコを吸っている。なるほど、男女比3対3か・・・。こんな感じのが前にあった気がするが、気にも留めなかった。