ダイアリーオリジナル:武田探偵の事件簿:切断島殺人事件:#22

「と、特別な存在って・・・。ぼく、そんな大げさな地位の人間じゃないですよ?」
「いえ、あなたは確かに『今週は特別な存在』なんですよ。」
(今週・・・!?)
 このとき全員が、武田の言葉の意味を理解した。それに真っ先に気づいたのは霧島。自分の想像を口にした。
「ま、まさか、薪焚き当番・・・!?」
「ええ。この家の薪は全てコピー紙の余りを使って束ねています。この束ねている紙と薪の間に、凶器となった画用紙製の刃をビリビリに破いて入れ手おけば、我々の目の前で、悠々と、証拠を燃やして隠滅できる・・・、巧妙かつ大胆な凶器隠滅トリックですよ。」
「ははは・・・そんなの、仕込むことなら誰だって出来るじゃないですか!」
「仕込むことなら・・・ね。でも、今週あなたが当番ですよ?『不自然に盛り上がった束ねている紙』をみれば、あなたが犯人でない限り、気づくんじゃ・・・?」
「そんなの言いがかりですよー。そんなのあったかさえ分からないのに・・・。」
「そうですか・・・。それでは、取って置きの証拠を出しましょう。あなた、私の尋問のとき、こう言いましたよね?『そりゃ、首を刺されるぐらいの恨みだもんなー・・・。』・・・と。」
「そ、そこの何が・・・。」
 この話に割って出たのは、赤菱法子であった。
「あ、確かにおかしいわ!だって武田さんはあくまでもたった今『首を刺されていた』と言ったばかりなのに、何でそんなことを・・・遺体の様子を確認していない田部さんが知っているの・・・?」
「え?ああ、そりゃ、ナイフがキッチンからなくなっていて・・・。」
「え?な、ナイフがなくなっているの!?え、ちょっとま・・・。え?!」
「・・・、霧島さんはナイフがなくなっていることを知らない・・・そりゃそうですよ。ここ最近・・・いや、われわれが着てからの、朝昼夜の食事は全て、パンを焼くか、既に切り身で売られていた肉を焼いたかぐらいの、包丁を使わないものでしたから・・・。でも、なぜ『料理担当ではないあなたがそれを知っていた』んでしょうかね?それに、なぜあなたがこの部屋でナイフを持って、そのベットに向かってさしたのかも・・・。」
「た、たまたまハムを切ろうとしたときに、ナイフがなかったのを今思い出しただけさ!!それに、この部屋に入ったのは、千晶が心配で・・・!!そ、それに物的証拠って奴がないじゃないか!!」
「ありますよ?あなた自身が持っているじゃないですか・・・。」
「・・・・・・・え?」
 武田の言う物的証拠とは・・・?